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はっと飛び起きると、辺りは真っ暗だった。 喉元が汗でぬめる。 無性に気持ちが悪くて寝巻きの袖で乱暴に拭った。 「ポーランド…」 うわごとのように名前を呼ぶ。 返事はない。けれど隣でシーツがもぞりと動いた。 まぁるく山になった毛布をめくると中には小さく丸まったポーランド。 安堵で息が洩れる。 「…窒息しちゃうよ?」 薄く笑いながら、頭が出るように毛布をずらしてやる。 ずっと篭っていた頬は熱でもあるかのように熱く、林檎のように真っ赤だった。 まるで小さな子供のよう。どんな夢を見ているのか、酷く安らかな寝顔をしてどれだけ触れてもぴくりともしない。 「ポーランド、俺を置いていかないで、ねぇ、ポーランド」 連れていって、何処にでも、遠くでも、夢の中でも。 「俺を一人にしないで、ポーランド……」 空虚な声で何度も何度も呼ぶ。 無茶を言っているのはわかっているけれど、もしかしたら。 もしかしたら、目を覚まして少しかすれた声で名前を呼んで、抱きついて同じ眠りに誘ってくれるかもしれない。 もしかしたら。 本当なら今すぐたたき起こして、泣き縋りたかった。 酷く不安で、胸が痛い。 こんなに無様な姿は晒したくない。 もう一人で立てるようになったはずなのに、胸の奥には未だ冷たい嵐が吹き荒れている。 前みたくもっと、優しい気持ちで笑いたいのに。 「ね、ポーランド…」 返事はないとわかっていて、リトアニアは小さく囁きかける。 「俺が足手纏いだったら、棄てていいからね」 こんな無様な俺を。 ぴくりと、彫像のようだったポーランドの瞼が痙攣した。 体がこわばる。けれどそれも一瞬のことで、次の瞬間にはもう微動だにせず、安らかな寝息を立てている。 聞かれていなかった。よかった、とため息。 だって、ポーランドはきっと怒るから。 棄ててだなんて言ったら、きっと。 わかっていたから目の前で言うことはなかったけれど、本当はいつでも思っている。 根雪でがちがちになった心を全部全部空っぽにして、また甘いレモンティで満たして欲しいのに。 彼は我侭な君主のようでいて、一適たりとも心に染みをつけてはくれない。 ぐちゃぐちゃに汚して、彼の色に染め上げられてもいいとさえ思えるのに。 本来ならもっと優先しなければならないことよりも強く、願ってしまうトーリス・ロリナイティスの弱さをリトアニアは本当に無様だと思って嘲った。 「……上手に笑えたかな」 ぐらりと酷い眩暈がして、それに身を任せてキスをした。 |