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おかえりなさいといつものように海に出ていたスウェーデンを出迎えたら、ん、といつものように短く返事をされ、これ、といつもと違うものを差し出された。 あまりにすんなりとした流れでされたもので、フィンランドは一瞬何の疑問も持たずに「はい」と受け取ってしまいそうになった。 荷物のように無造作に渡されたのは、ぐったりとしたリトアニアだった。 流石にはじめの頃はスウェーデンももっと慎重に扱ったしフィンランドもおひゃああああ!と悲鳴をあげていたけれど、今では小さく声を上げただけですんなりと受け取れる。 「スーさん、サウナの用意はしてありますんで船の整備が終わったらどうぞ」 「ん、ありがとなぃ」 いつも通りの会話を交わして、フィンランドはよいしょ、とリトアニアの体を持ち上げた。 意外とがたいのいいリトアニアを抱き上げるのは最初こそ困難だったけれど最近はコツを掴んだのかあまり苦ではない。 リトアニアの体は冷え切っていたけれど、バルト海の波に揉まれて大分疲弊していたしすぐサウナに放り込むのはあまりに酷である。 とりあえず客間のベッドに寝かせると濡れた服を脱がせて上掛けを被せ、熱いお湯を入れたボトルを用意し抱えさせた。 それから、夏にはシーランドの水浴びにも使われる大きなたらいを持ち出してお湯を張り、冷えた足を浸からせた。 「リトアニアさん、あんまり心配かけるようなことしちゃ駄目ですよ」 お湯で濡らしたタオルで海水に浸かった脚を優しく拭うあいだに諭すように言ってはみるけれど、たぶん無駄であろうことはフィンランドにもわかる。 言って聞くようならばこんなに何度も繰り返すはずはないのだから。 面倒だとかそんなことは思わない。 けれど頻繁に繰り返していればいくら国の化身であろうといえどいつかは消滅してしまうのではなかろうか。 お人よしといわれるかもしれないが、フィンランドは心配だった。 そんなフィンランドの胸中を知ってか知らずか、リトアニアはうつろな瞳で膝に乗った花たまごを撫でていた。 あまりに何度も拾われるせいで花たまごはすっかりリトアニアに懐いてしまっている。 リトアニアの首元に鼻先を埋め、潮の匂いにふごふごと鼻を動かしていた。 「……花たまごはいいね」 ずっとされるがままだったリトアニアが、緩慢な動作で花たまごを抱き上げた。 つぶらな瞳がくりんとリトアニアを見つめる。 思いもよらない台詞にフィンランドも手を止めてリトアニアを見上げると首を傾げた。 「俺も、犬になりたいなぁ……」 犬だって、いいことばっかりじゃありませんよ。 喉元まで出かかったフィンランドの言葉は、リトアニアがあまりに空虚で光のない瞳をしていたので発されることなく飲み込まれた。 |