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白くてすべすべで、農作業で鍛えられてはいたけれど、少しだけ子供らしい柔らかさを保っていて。 風呂上がりなんかに何も着ていないリトアニアの背中に抱きつくのが好きだったのに。 あの白い背中はもう、奪われてしまってこの世界の何処を捜したって見つからない。 「リト、痛くないん」 相変わらず白い、けれど成長で少し骨ばった背中を指で辿る。 肩から背中に刻まれたたくさんの花花花。 これがキスマークだったらどれだけ良かっただろう。 少しの間嫉妬を堪えれば鬱血は消えてしまうけれど、深く刻まれた鞭の痕はきっとこの先消えることはない。 「大丈夫、もう痛くないよ」 リトアニアは少し笑って言う。 安心したかったけれどポーランドは心の中で『もう』の一語を何度も何度も繰り返した。 『もう』痛くない。では昔は?傷つけられてすぐは?かさぶたが剥がれるまでは?柔らかい皮膚が丈夫になるまでは? 次から次へと疑問が渦巻いて先に全く進めない。 詰まって出てこない言葉の代わりにぺろりと背中を舐めた。 「ポーランド?」 なんで何も言わないん、話そうとせんの、俺そんなに頼りないん?何が足らんの、どうすれば俺に頼ってくれるん、なぁ。 いつでもリトアニアを見つめているのに、視線が皮膚の上ですべるような錯覚に陥った。 笑顔は何処か遠く、ポーランドよりずっと遠くを見ているようで、いつだってふたりきりなのにポーランドは独りぼっちだった。 一人で窓辺に佇むリトアニアに抱きついて、何を考えていたかと聞いてもなんにもと首を振って誤魔化してしまう。 その実物思いにふける時間はポーランドに向ける時間よりもよほど多くて。 まるで柔らかな暴言をその身に受けている錯覚に陥ってしまう。 だから必死で歩み寄るのに、リトアニアの眼は決してポーランドを見ない。 もっとこっちを見て。話して。助けてと手を伸ばせばいつだって惜しみなく与えるのに、それは許されない。 与えたいはずなのに欲しがってばかりで、笑って欲しいだけなのに。 「リトのバカ」 聞こえないくらい小さな声で呟いて、肩の花に噛みついた。 少しだけしょっぱくて、淋しい味がしたように思う。 ――あんまりひとりにせんといてよ。ふたりきりなのに。 声にならない言葉は淋しさと一緒に喉を滑り降りてゆく。 |