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両腕は後ろ手に拘束されていた。 革のベルトできつく締め上げられていて、動いても食い込む一方で外れる兆しはない。 足は腕に比べれば自由に動かせるものの、それぞれの足首につけられたリングを繋ぐ鎖のおかげで大きな動きは無理だった。 いっそまとめて拘束すればいいのに。 「だって両足を縛っちゃったら足を広げさせる楽しみがなくなっちゃうじゃないか」 にこにこと心底楽しそうに笑う主は豪奢な椅子に腰掛けて蜂蜜入りのウォトカをちびりと飲んだ。 彼はリトアニアに指一本触れない。 両手足だけではない。 首には犬のような首輪を、後孔には尻尾と称してバイブレーターを、固く張り詰めた屹立には戒めを、施されているのにロシアは一度もリトアニアに触れてはいない。 「ベラルーシ」 「はい」 微動だにせず、這いつくばるリトアニアを眺めていたベラルーシがロシアの言葉に初めて身体を動かした。 彼女こそがリトアニアを今のような状態にした張本人であったが、それもロシアの命である。 そして彼女はロシアが再び命を下すまでじっと立ち尽くしていた。 ロシアはやわらかな水鳥の羽を束ねた道具をふわりとベラルーシに向けた。 「リトアニアを虐めてあげて」 「はい」 ベラルーシはまた短く返事をすると羽を受け取り、動くこともままならぬまま震えるリトアニアに近づいた。 「…本当に、いい眺めね」 さけずむように呟いてベラルーシは無防備な背に羽を這わせた。 触れるか触れないかの微妙な力強さで。 「っあぁぁ…」 リトアニアは顔を絨毯に伏せて快楽に身体を震わせる。 羽はふわふわと背を辿り、バイブの震える後孔まで辿りつく。 ぐりぐりと中を抉られる感触と入口に与えられる頼りない刺激はリトアニアを酷く追い詰めた。 「やぁ、いや……やめてベラルーシ、おねがぁい……」 高く突き上げた腰をふらふらと揺らしながら懇願するけれど、ベラルーシは少しだけ笑みを浮べるばかりで手は止めない。 「嫌よ。後ろに入れられて、女のわたしに好きなようにされて、本当に恥ずかしいひと。本当は嫌じゃないんでしょう?こんなに腰を突き出して、誘っているようにしか見えないけど?ああわかった、これ以上してもらえないのが嫌なのね?御生憎様。わたしは貴方みたいなあさましい人の相手をする気はないわ。直接触るのも嫌になるくらい。だからってロシア様に触れてもらえるだなんて思わないことね。身のほど知らずのСобака?」 「ぁ……」 これでもかというほど拘束されても、口を塞がれないのは鳴き声を聞くため。 目を塞がれないのは女に犯される自分を目の当たりにさせるため。 誰が主人か、見極めさせるため。 「犬の躾って本当に大変……だからこそ、楽しいんだけど」 ロシアは指一本動かさないまま、ひくひくと喘ぐリトアニアを見つめていた。 両足の間から覗くリトアニア自身はこれ以上ないほど張り詰めているけれど、根元に食い込む戒めのせいで涙を零すことさえ許されない。 もう相当につらいであろう。それなのにリトアニアはベラルーシから与えられる快楽ばかりを追って高い声を上げることができる。 ロシア気に入りのおもちゃだった。 「っあぁ、ロシアさぁん……」 涙で濡れたリトアニアの顔が悠然と構えていたロシアへと向けられる。 甘い声を上げるくせにもう限界なのか、少しでも快楽を得ようと腰がくねっている。 「お願い、しますっ……これはずして……も、いかせて、くださ……」 ベラルーシ相手に何を訴えても無駄だと思ったのか、それともあられもない言葉で女性に懇願することへの抵抗からか。 直接伝えられた哀願に、ロシアはにっこりと笑みを深めた。 リトアニアの表情に安堵が滲む。 「ベラルーシ」 「はい」 呼ばれて、ベラルーシは手を止める。 ロシアはどこまでも従順な彼女に優しく笑いかけた。 「もういいよ。飽きちゃった」 リトアニアの顔面が蒼白になった。 「もう夕飯時でしょ?ボルシチが食べたいな。作ってくれる?」 「はい、ロシア様」 ロシアはゆったりとした動作で立ちあがる。 ベラルーシの手からリトアニアを辱めていた羽を優しく奪うと、ぽいと無造作に放り投げる。 慈しむように白く細い女性の手を撫でたあと、ロシアは靴を絨毯に沈ませながら扉へと向かった。 ベラルーシも一歩遅れてそれに倣う。 「待って、待ってくださいろしあさ、ぁ……!」 必死で引きとめようとしたけれど、体内に埋め込まれたバイブが急に酷く暴れて言葉が切れた。 扉を開けたロシアがこれ見よがしにリモコンをひらひらと振る。 「そのうちウクライナを呼んであげるからね」 ばいばい、と最終通告をして、ロシアは厚い扉を閉じた。 |