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どうしようもないことをどうにかしようとしてお屋敷を飛び出したのは二日前だった。 辞表をおいて、少ない私物を詰めたボストンバッグと現金だけを持って、夜の街へと繰り出した。 住み込みの仕事で銀行の口座も主が用意したものだから、足がつくのが怖くて持ってこられなかった。 結構な金額が貯まっていたけれど一気に引き出して逃げる前にばれるのもまた怖く、結局半分も引き出せずじまい。 けれど残りの金額をもったいないとは思わない。 とりあえず少しでも遠くに行こうと夜行列車に飛び乗って一日、たどり着いた見知らぬ町での生活基盤を探して一日、そして今、途方にくれていた。 リトアニアに身内はない。 住み込みの仕事を始める前も根無し草だったから帰る家もない。 そしてまず困ったことに、家を借りることができなかった。 今まで仕事をしていたせいで年齢のことをすっかり失念していたがリトアニアは未成年だ。 当面をしのぐだけの現金はあるものの住所がなければ仕事に就けない。 こうなっては住み込みの仕事を探すほかない。 けれど何の伝もない町でそう簡単に職を探せる当てもなく、ふらふらとさまよっていた。 「本当に、どうしようかなぁ」 気がついたら同じような塀の周りをずっと歩いていた。 はっとして前後を見ると長い長いピンクの塀。 どうやら全部同じ敷地らしい。 塀の向こうには立派な庭があり、会社というよりは個人所有の屋敷のような雰囲気だ。 「やっぱりどこにでも、こういうお屋敷ってあるもんだなぁ……」 呟いて、あてどもなく道なりに歩いているとどっしりとした門扉が見えた。 かわいらしいピンクの塀に似合わないごつい勤続の門には小さな張り紙がしてあって、思わず覗き込む。 『住み込み家政婦募集 男女問わず 委細面談』 「ええ?!」 思わずがっと張り紙にかじりついた。 前の仕事とそう変わらないし、ここで雇ってもらえれば路頭に迷うこともない。 男女問わずならハウスキーパーというべきじゃないかなと突っ込むのも忘れ、渡りに船とばかりにリトアニアはドアベルを鳴らした。 |